東大の入学手続きの後のテント列

 東大に合格したあと,入学のための書類が山のようにくる.これに色々記入したりお金払ったりして「諸手続き」というやつに行く.ここで学生証やらもらったり生協に加盟したりとかそういうのをやる.確か駒場キャンパスの1号館だったと思う.

 これがおわると「テント列」という独特の文化に出くわす.テント列というのは様々なサークルや部活がテントを順番に並べて一筋の道を形成するものだ.このテント列は全長数百mほどもあるが,基本的に全員強制参加である(理科三類は別ルートがあるし,嫌ならどうにかして脱出できるはず).このテント列では道やテントに上級生と新入生が入り乱れまるで満員電車状態だ.

 初っ端にゴツイ運動会(いわゆる部活)のテントが並んでいる.ここでほとんどの新入生が上級生に捕まえられテントの中に設置されているブースに座らせられてお話をする.当然ほとんどの新入生が運動会にはいるわけないのだが,強引な勧誘が行われ,メールアドレスを紙に書かされ,それで解放される.テントをでるとまた次の運動会が現れ同じことを行うのだ.

 運動会の集団を抜けると他のサークル群も現れ,似たようなことをするが,幾分か勧誘の強引さは緩くなる.新入生もかわし方を覚えてくるので最後の方は消化試合のようなものだ.

 結局テント列を抜けるのは平均でだいたい2時間くらいのものだ.長い人だと半日そこで時間をつぶす人もいるし,タイムアタックみたいにできるだけ早く抜けようと試みて30分とかで出てくる人もいる.

 テント列は押し合いへし合いをする満員電車のようなものだ.誰がどこを触っていようとバレようがない.ところがそこは東大生,そういう悪いことはしないのだ.ハロウィンの渋谷のようなことにはならない(少なくとも表沙汰にはなっていない).私も幸いそういうことはなかった.

 この時とにかく新入生はお客様だ.とてももてなされる.女子は特にもてなされる.どこもかしこも女子は欲しいのだ.女の子がいるところに男も女も集まるのは人間の性だ.みんなあの手この手で自分のサークルに入れようとする.

 上級生たちはしきりに「女子のコミュニティ」の大切さを説く.当然だ.理科一類ではクラス(クラスについては今度書く)に女子の数など多くて4人だ.ここでコミュニティが行き詰まるとおしまいだ.「女子がたくさんいるサークルだよ」,などと勧誘をかけてくる.そういう直接的な勧誘は男子にはしないのだろうか.みんなのズボンがテント列になってしまうのだろうか.

 何はともあれリスクヘッジは大切だ.コミュニティをいくつか保持しておくに越したことはない.私はテント列でクソの役にも立たない大変有用な情報を得て,テント列を後にしたのだ.